子どもの遊びや遊具、遊び場所に隠されている教え(教育的な意味)を知って、一緒の週末をもっともっと楽しもう!

手塚貴晴・由比さんインタビュー 子どもを育てる環境

「遊びの中にある学びとは?」をさまざまな方にインタビュー

手塚貴晴・由比さんインタビュー
大事なのは、子どもたちを管理しないこと
過保護にしないこと

2016.2.2
手塚建築研究所
手塚 貴晴・由比(てづか たかはる・ゆい)


入園希望者が絶えない幼稚園としてあまりにも有名な東京立川市にある「ふじようちえん」。屋根の上は子どもがグルグル走り回り、大きな窓は一年中開けっぱなし。子どもが子どもらしくいられることをモットーに、このユニークな園舎を設計したのが建築家の手塚貴晴さんと由比さん。「自分たちの子育てと同時進行だったので、すごくリアルでした」と話すご夫婦の子育ては、「守りすぎないで、なんでもやらせてみること」。自然との触れ合いを大切にしながら、子どものチャレンジ精神を見守り続けたお二人の言葉は、子どもの持つポテンシャルの大きさに気付かせてくれます。

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子どもを育てる環境

大人が与えると、子どもは枠を越えなくなる
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PHOTO:手塚建築研究所

貴晴:たぶん、私たちは子どもに必要な環境や建物がわかっていると思う。自分に子どもがいるので、ふじようちえんの仕事に入る前から、子どものことはわかっていることが多かった。いろんな所に設置されてる遊具を見ても、「こんなの遊ばないよ」とかね。でも今の日本は「安全に安全に」の風潮だから、意味のなさそうな遊具がいっぱい出てきてしまう。

由比:やっぱり、子ども育てるなら、できる限り自然の中が最高ですよ。遊具のように、大人が与えるものは、子どもはある粋を越えなくなります。自然の中で自分で見つけていくからこそ幅も広がっていくというか、脳みそが働く。これはとても大事なこと。

貴晴:要は、遊具には安全装置があって、例えばすべり台なら、ここから登ってこうすべるという使い方がある。でも子どもはすべる所を上がりたいわけで、本来はそうやって子どもが自分で発見しながら遊ぶことに意味があるはずです。優秀な子どもを育てるなら、やっぱり木とか斜面とか崖とか、そういう所を苦労しながら登ることでいろんな事を覚えるんです。それがないと、人間がどんどん弱くなってしまう。

由比:ふじようちえんにも最初は遊具をつけようという話があったのですが、園長先生や私達のそういう考え方もあって、最終的には「いらないんじゃない」ってことになりました。結果的に、遊具がなくてとてもよかったです。子どもたちは自分で考えながら、いろんな遊び方を創り出すんですから。

貴晴:宮崎駿監督の映画でも、じつは遊具がひとつも出てこない。きっと子どものいろんな事も自然のことも、わかってるからなんだと思います。

自然が子どもを強くする

由比:子ども育てるなら、やっぱり自然は最高です。今の時代は、それを意識的にやらないとできなくなってしまったのが残念です。

貴晴:子どもってね、というより人間て強いんですよ。最近では、子どもに土を触わらせないという親もいるけど、人間なんてばい菌の塊なんです(笑)。そもそも大腸菌がないと消化もできないし、細胞の中にあるミトコンドリアだって別の生物だし、要はいろんなものが寄生して、その寄生体が集まって人間を動かしてるわけです。

由比:あんまり清潔、清潔って言うのも考えものですね。

貴晴:おもしろいのが、O157は清潔な先進国で発生してる。人間は菌も含めて、いろんなバランスの中で育っているから、あまり無菌状態にしてると、逆に菌が増えてしまうってこともある。温度だってそうです。夏の海岸の砂は50度なんですが、海水浴に行きますよね。冬はマイナス20度のゲレンデでスキーもできます。つまり、人間は70度の温度差でも暮らせるんです。

PHOTO:手塚建築研究所

由比:ふじようちえんは、建物の外が廊下なんです。で、外と中を仕切る窓はいつも開けっぱなし。だから、夏は暑くて冬は寒い。自然の気候に近いんです。その上、教室を仕切る境目もないから、いろいろ開放感があるのでしょうね。子どもは箱に閉じ込められてるのが嫌いだから、開け放し状態の方が落ち着くんですよ。

貴晴:外廊下だから、雨も吹き込みます。でもね、子どもって耐水性なんです。お風呂に入れたって、溶けたりしないでしょ(笑)。服がぬれたら、着替えればいい。本当に当たり前のことをして、人間はちゃんと生き残ってきたのに、ある時から守り過ぎちゃって、人間本来の力が弱くなってしまいました。

雑音も温度差もばい菌も大切な要素

由比:日本は気候がいいから、外の環境がいいんですよ。どんなに建築でがんばっても、やっぱり外の気持ちよさにはかなわないんです。子ども相手ってことだけではなくて、建築として、自然とどう付き合うか。大きな危険を防ぐための「しつらえ」はある程度必要ですが、外の環境を楽しめる建物をどうやって作るかが課題だと思います。

貴晴:意外かもしれませんが、雑音も大切です。子どもはザワザワしてるとよく寝れるんです。逆に静かだとダメ。人間の祖先がザワザワするジャングルで育ってきたからでしょうね。小さな子がファミレスみたいなうるさい所でも寝ますよね。要は、人間というのは雑音が必要で、その方が子どもたちは授業に集中できるんです。で、ばい菌もあって、温度変化もあって、そういう中で生き残るのが人間で、それが自然な状態なのだと思います。いちばんは、屋久島の自然の中で子どもを育てられたらいいかもしれないですね。

建築には人びとの生活を変える力がある

由比:ふじようちえんでは、子どもたちは屋根の上をホントによく走るんです。べつにやらせてるわけでもないのに、自然にワァ~とたくさん走る。

貴晴:ふじようちえんの平均は一日4,000メートルですよ。数ある幼稚園の中でも、もっとも運動量があることになります。

由比:で、走りながら、ほかの子が何をやってるか一生懸命見てる。次に何して遊ぼうかの参考にでもしてるみたいに走ってる。ドーナツ状の建築にしたことで、友だちがなにして遊んでるかまで見えてしまう。子どもにとっては、次の遊びを創り出す意味でも大切なことですよね。

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PHOTO:手塚建築研究所

貴晴:大自然に子どもを出せばいいかってことだけじゃなく、放っておいても、子どもが自分でやることが大切なんです。そんな環境を用意するという意味では、やはり親の目が大事なんです。親は子どもの小さいからだを守ってあげなくてはいけない。守るときは、本来ある人間の育て方のなかで守る。無菌状態にしたり、怪我しないようにではなく、本当に危ない部分だけをしっかりと守ってあげれば、子どもは自然に世の中で生きていく術を学んでいきます。私は、建築には世の中と人びとの生活を変える力があると思っています。

【編集長の一言】子どもと公園に遊びに行くときに、そこには目的の遊具があって、その遊具で子どもを遊ばせるという考えが私にもありました。大人が与える枠に子どもをはめていたのかもしれないと手塚さんの話を聞いて感じました。遊具に頼りすぎない遊びを考えていけたらと思います。なかなか大自然のあるところへは頻繁に行けませんが、その機会をなるべく多くしていくべきだと考えます。

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