子どもの遊びや遊具、遊び場所に隠されている教え(教育的な意味)を知って、一緒の週末をもっともっと楽しもう!

手塚貴晴・由比さんインタビュー 子どもとの時間は10年しか続かない それが人生でいちばん美しい時

「遊びの中にある学びとは?」をさまざまな方にインタビュー

手塚貴晴・由比さんインタビュー
子どもとの時間は10年しか続かない
それが人生でいちばん美しい時

2016.2.2
手塚建築研究所
手塚 貴晴・由比(てづか たかはる・ゆい)


入園希望者が絶えない幼稚園としてあまりにも有名な東京立川市にある「ふじようちえん」。屋根の上は子どもがグルグル走り回り、大きな窓は一年中開けっぱなし。子どもが子どもらしくいられることをモットーに、このユニークな園舎を設計したのが建築家の手塚貴晴さんと由比さん。「自分たちの子育てと同時進行だったので、すごくリアルでした」と話すご夫婦の子育ては、「守りすぎないで、なんでもやらせてみること」。自然との触れ合いを大切にしながら、子どものチャレンジ精神を見守り続けたお二人の言葉は、子どもの持つポテンシャルの大きさに気付かせてくれます。

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子どもには本物の体験を

本の中とは違うということを見せたい

手塚 貴晴(以下、貴晴):子どもの小さいうちに、いろんなものを見せるってとても大事だと思う。例えば、トカゲなども。以前、南の島で大きなトカゲを息子と追いかけたことがある。けっこう危ないトカゲなんだけど、向こうは食われるんじゃないかと一生懸命逃げてた(笑)。

手塚 由比(以下、由比):ウチはこわがらないんです。ヘビもへいきで一緒に追いかけます。動物との付き合い方をちゃんとわかってるから。

貴晴:そう、なにが危ないか知ってる。例えば犬なら、耳の状態で怒ってるかどうかを見わけたり、なでるときは手を下からとか、ハブならどう注意すればいいかとか、ひとつずつ教えるんです。

由比:昔も今も、ヘビとかは苦手という親も多いでしょうね。ウチは極端なのかもしれない(笑)。

貴晴:本の中のヘビと本物のヘビの違いを子どもに見せたくて、僕が捕まえてきて、絵を描かせたせたことがあります。じっと観察しながらでないと描けないから、そういうことを通してヘビってどういうものかわかりますよね。ちゃんとお父さんが捕まえて、教えてあげる。

実際に体験しないとわからない

由比:いまでは街がキレイになりすぎて、ヘビがいる場所も少なくなりましたけど。

貴晴:ジョークで、シャケの切り身にモーターをつけて水族館で泳がせたら、とてもウケたという話を聞いたことがありますが、大人ならそれもありかもしれないけど、子どもには「あれがシャケ?目はどこだろ」って、まちがった像が残ってしまう。ウチは、ブリなんか私が三枚におろして、魚ってこういうものだっていうのを教える。

由比:切り身が泳いでるのを子どもが見てもね….。ちゃんと本物を見せるってすごい大事で、それが最高のぜいたく。実際に体験しないとわからないですよ。

貴晴:例えば餅つき、ウチは毎年30キロつくんですよ。子どもだから初めは重たくてうまくいかないけど、だんだん餅つきってこういうものかってわかってくる。本の中とは違うってわかる。

由比:最近は保育園の餅つきがなくなったりしてるようですね。ノロウィルスが危ないって中止になるとか….。

貴晴:私は「ノロウィルスくらい、いいじゃない」って思ってしまう。何回かかかったほうが強くなるってね(笑)。ちょっとくらいノロウィルスが入ってるかもしれないけど、食べさせる。臼(うす)の木くずも入ってるかもしれないけど、食物繊維だとか言ってね(笑)。そうすると子どもが丈夫になる。

いちばんの教育は自然

由比:雑菌にもそれなりに触れないと。無菌状態だと弱くなってしまう。

貴晴:おもしろいことがありました。私たちはセブ島の貧困地区といわれるところで仕事をしてて、そこにウチの子を連れて行ったりしてたんです。あるとき息子が、「新宿御苑でデング熱が流行ってるけど、僕、行ってもだいじょうぶ?」って。「バカか、おまえは。ついこないだまでデング熱いっぱいのところにいたのに、かかってないだろ?おまえがデング熱を持って帰ってきたんじゃないの」って冗談言って笑いましたよ。

由比:死んでしまうような病気は、当然、親が守らないといけないですよ。でもちょっとくらいの菌なら、親が気にしすぎてると、子どもが本当に弱くなってしまう。いろんな意味で、いちばんの教育はやっぱり自然です。忙しくてなかなか行けなくなりましたが、山とか最高です。単純に足場の悪いところを登るだけでも、集中して頭を使うじゃないですか。自分で考えるって、子どもには大事なこと。

iv_002_teduka_07貴晴:ときどきウチの子の友だちと一緒にザリガニ釣りに行ってましたが、最初はザリガニにさわれない子もいます。そこにウチの子が「こうやって捕まえるんだよ」って。で、よその子は「ウエッ!」って逃げ回ってた。

由比:でも、どの子も本当は好きなんです、そういうの。慣れてしまえば、みんな工夫して飽きずにやってます。捕まえるって、楽しいんですね。

貴晴:子どもは本当はそういうことが大好きなのに、親が「ダメダメ」って言ったらダメですよ。

由比:空き地がほしいですね。昔は近所に空き地がいっぱいあって、勝手に遊んでた。でも今は空き地があっても、入れないようになってて、入ると怒られる。それってどうなんだろうと思います。虫もいて、適当にゴミもあって、気をつけないとケガをする。これって、子どもには重要なことです。親が見てなくて、勝手に外でいろんなことをしてくるって、すごく大事だなと。公園ならそこそこあるけど、なんだか安心すぎる。

子どもにおもねるのではなく、守りすぎないことが大事

貴晴:建築で考えると、昔の日本家屋ってすごくいい。

由比:『サツキとメイの家』(愛知県長久手市にある、映画『となりのトトロ』に登場する姉妹の家を再現した施設)っていいですね。発見がいっぱいある。で、みょうに子どもにおもねったりしてない。子どもにおもねると、ある領域を超えないっていうか、ちゃちになってしまう。

貴晴:個人的には、幼稚園にあるような子ども用便器なんていらないと思ってる。普通の便器使わせて、ちょっとくらいおしりが落ちてもいいじゃない。子ども用なんて作るから子どもが弱くなっちゃう。普通の使ったところで、昔の汲み取り式じゃあるまいし、落ちてドボンていうわけじゃない(笑)。ダイニングのテーブルや椅子もそう。普通のテーブルにして、普通の椅子に一生懸命のぼらせれば、強くなりますって。椅子から落ちたって、子どもはちょっとくらいのことは大丈夫ですよ。

由比:もちろん、私たちが作る子ども向けの建物は、安全面はじゅうぶんに考えてます。でも、それはおもねるんじゃなくて、子どもを守りすぎないようにすることが大事なんです。

貴晴:建築にとって重要なのは、どこまでやれば重大な問題が子どもたちに起きないかってこと。さじ加減はすごい大事。先ほどもふじようちえんの話で触れましたが、手すりも大切だと思うし、子どもたちが飛び降りても大丈夫な高さってことも。プロですから、そういうのを予測して、施設一つ一つを考えていく。

由比:子どもがおもしろいって感じる環境と、本当に危ない部分から守ってあげるというのが両立してないと。

貴晴:自然とか空き地とか、世の中にあるあたりまえの環境がどんどんなくなっている。フィールドアスレチック横浜つくし野(神奈川県横浜市)にすり鉢状のアスレチックがあるんですが、あれはとても優秀。

由比:あそこは楽しい。子どもたちが大好きで、小学校に入る前は毎週のように行ってました。

スタッフと綿密な打ち合わせをする手塚夫妻

貴晴:崖だと危ないけど、大きなすり鉢状だから、どこにも落ちない。最後に子どもたちが真ん中に集まるだけなんです。建築物ではないけど、どれくらいだと危ないかがよく考えられてて素晴らしいです。

由比:子どもが自分で「こっちの斜面からだったら登れるかなぁ」とか、いろいろ考えて工夫する。

貴晴:そういうときって自発的に動くでしょ? 自分の裁量のなかで、自分が動ける場所を見つけていく。逆に危ないのは、親が指示したりすると、たいしたことないところで大ケガするんですよ。放っておいて、自分で考えなくちゃね。

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