子どもの遊びや遊具、遊び場所に隠されている教え(教育的な意味)を知って、一緒の週末をもっともっと楽しもう!

内田 幸一さんインタビュー 時代の流れと子どもの可能性

「遊びの中にある学びとは?」をさまざまな方にインタビュー

内田 幸一さんインタビュー
今日が楽しければ、明日も楽しい
子どもの人生の先回りをするより、今を大切に

2016.8.30
『森のようちえん』全国ネットワーク 運営委員長
内田 幸一(うちだ こういち)


1950年代、デンマークの一人のお母さんが森の中で保育を行ったのがルーツとされる『森のようちえん』。自然の環境の中で、できる限り子どもたちが自ら遊んで学ぶことを尊重する姿勢は、世界的な活動として広がり、日本でもここ数年で200か所以上の『森のようちえん』が誕生しています。「子どもに何かをさせるのではなく、自分からやることを大切にしたい」と語る内田幸一さんの言葉から、時代が求める新しい幼児教育の形が見えてきます。

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時代の流れと子どもの可能性

なんでも選べる時代になってきた

長い間、野外保育をやってきましたが、だんだん子どもたちがひ弱になってます。体力的な面だけならそれ程変わらないのかもしれないですが、いろんな面でひ弱です。とくに気持ちの部分。

確かに“こころ”の時代に入ってきてるんですよ。20世紀後半から、社会全体がかなり“こころ”のことをデリケートに扱うようになってきてます。“癒し”なんて言葉がキーワードになったり、そのたぐいの言葉がたくさん生まれてきました。

それまでは、“根性”とか“頑張れ”とか、「男の子はこうであるべき」「女の子はこうじゃなきゃいけない」という考え方があって、けっこう周りからの締め付けがありました。そういったものがどんどん取り払われていって、自由になっていったんです。なんでも選べる時代になってきた。

どうやって子育てしていいかわからない

uchida10b選択肢が増えた分、今度は“迷い”がたくさん生じた。だから、心の問題のところに行きつくんですよ。自分でそれを、“自分の心なり”にコントロールしなきゃいけない時代に入ってきた。でも、どうやってコントロールするかがよくわからない。子どもたちを見てると、それがよくわかります。

親も迷ってます。いちばん端的なのは、男の子だから、女の子だからというタガがなくなってしまったこと。男の子も女の子も自由なんです。好きなものを選べるし、好きなように育てることができる。タガから解放されたんです。

でも解放されたがために、こうしなきゃいけないっていうのがなくなってしまって、どうやって子育てしていいかわからない。これと同様なのが、学歴社会の考え方。昔は、「学歴があれば何とかなる」という感じで、どの親も必至で受験勉強させてましたね。

自分を信じて前へ進むことをしない

今なら、オリンピックの影響もあってか、スポーツ一辺倒でしょうか(笑)。「スポーツで成功してほしい」「メダリストになってほしい」って多いでしょ? でも、そんな願いは、そうそう実現しない。

じゃ、うまくいかなかった時、「人間的に何を大切にして、何を軸にして育てるのか」ということが、わからなくなった時代なんですよね。

あいかわらず「勉強は大事だよ」という考え方はある。もちろん、それは必要なこと。でも、勉強はべつに子育ての主軸ではないんです。何かを学んで知識をつけて、より高度な知識を得ていくことは、否定されることではない。

でも、その高度なところまでは行かないし、行けない。つまり、自分で探求して、自分の興味で高いところを目指すエネルギーがない子どもが多いんです。そこが“ひ弱”になっている部分。自分を信じて自分で前へ進むってことを、なかなかしないんです。

“遊び”というのは、自分から動いていること

時代が流れてるからといって、子どもの持ってる可能性が無限であることは変わらない。その可能性を、子どもが自らの力で広げていけるようにするのが『森のようちえん』の目標だと思います。そこには、広い意味での“遊び”がとても重要な役割を果たします。

“遊び”というのは、自分から動いていることなんです。自分で何かに興味をもって打ち込んでいたり、自分がやっていて面白かったっていうような、そういう経験そのものなんです。

もちろん、自主的だけではなく、いわゆる「大人にさせられている」場合や「◯◯ちゃんがやれっていったから」「えばっている子がいるからしょうがない」「あの子と一緒にいたいから」みたいにいろいろある。だから、自分自身の中では“やりたい”と“やりたくない”の裁量が働くわけですけど、そういった中でも自分は動いている。それも大事な経験なんです。

PHOTO:内田幸一

“遊び”は決してラクなものじゃない

つまらない日があったり、今日は何をやっているんだかわからない日があったり、“遊び”を見つけるまでに時間がかかったり、そういったことも意外と大事なんですよね。

大人は子どものそういう姿を見ると、自分が関わって「遊ばせなくちゃ」と思って穴埋めしてしまうんです(笑)。大人が関わってくることは、子どもってイヤなことじゃない。「遊び相手ができた」「お任せで遊んでくれる」って感じで、大人に乗っかってればラクですから。

“遊び”は決してラクなものじゃない。自分から動いているんだけど、面倒なこともいっぱいある。でもそれが当たり前にならなくちゃ! 次の時は、面倒だなんて感じなくなればいいわけですよ。面倒があるのは、当たり前のことなんですから。

つまり、面倒なことには関わらないじゃなくて、面倒かもしれないけど、やってるうちに面倒じゃなくなるというか、鈍感になる。そんなことは、屁でもなくなる。成長していくんです。それをずっと伸ばしていけば、可能性がどんどん広がっていく。

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