「遊びの中にある学びとは?」をさまざまな方にインタビュー
内田 幸一さんインタビュー
今日が楽しければ、明日も楽しい
子どもの人生の先回りをするより、今を大切に
2016.8.30
『森のようちえん』全国ネットワーク 運営委員長
内田 幸一(うちだ こういち)
1950年代、デンマークの一人のお母さんが森の中で保育を行ったのがルーツとされる『森のようちえん』。自然の環境の中で、できる限り子どもたちが自ら遊んで学ぶことを尊重する姿勢は、世界的な活動として広がり、日本でもここ数年で200か所以上の『森のようちえん』が誕生しています。「子どもに何かをさせるのではなく、自分からやることを大切にしたい」と語る内田幸一さんの言葉から、時代が求める新しい幼児教育の形が見えてきます。
大切にするべきこと
自分の子どもを育てるチャンスはそんなに長くない
私には男と女と2人の子どもがいますが、この子たちが産まれた頃に野外保育に着目した活動をスタートしました。今では上の子はもう30才を超えてますけど、その頃は活動が忙しくて自分の子どもどころじゃなかった。
子育ての時期を通り過ぎてから気付いたんですが、うちの子たちはかなりひどい目にあわせましたよ。ほとんど実験台でしたから(笑)。彼らにとっては、スパルタで横暴なお父さんだったんじゃないかな。だいぶ、あっちこっち引っ張りまわしました。
親は、自分の子どもを育てるチャンスはそんなに長くないんです。子どもの数もせいぜい2、3人ですから、経験できる数も多くない。あたふたしてるうちに、子どものほうがどんどんいろんな道に入り込んでいって、親は後ろから追っかけるみたいな話になるんです。落ち着いて子育て全体を俯瞰(ふかん)するなんて、なかなかできないですよ。
今この瞬間にやるべきことをやってほしい
私が幼稚園の先生だった頃から考えると、子どもたちと関わる仕事をして40年近くになります。子育て真っ最中の親御さんたちには、ぜひ今を大切にしてもらいたい。「今、とってもかわいい」っていう、今のその気持ちをいちばんにしてほしい。
「この子の将来のことを考えて、今はこれをやらせなくちゃ」「これをできるようにさせなくちゃ」みたいに人生の先回りをするんじゃなくて、今この瞬間にやるべきことをやってほしい。その時は一回しかこないんです。2才の今、3才の今に接することができるチャンスは今だけ。
「この子、かわいい」って感じてるなら、いっぱい遊ばせて、“楽しい”“幸せ”っていうのを十二分にやってほしい。あとのことは、その時になって考えましょう(笑)。「三つ子の魂百まで」とか「今から始めないと間に合わない」なんて、親はつい思い込んでしまうんでしょうが、そんなことはないです。
毎日楽しければ、この子は人生ずっと楽しい
その子自身が興味をもって、今を生きて行くかどうかが重要なんです。親はそれを後ろからバックアップしてあげればいい。親のほうがあんまり先んじて用意しすぎると、子どもはいつの間にか、それに乗っかっていこうとする。でも、いずれは乗っかりきれなくなって、親の期待に応えられない自分に悩んでしまう。
『森のようちえん』の子たちは将来のことを見据えて行動してるわけではないので、「今日が楽しければ、また明日も楽しい」って思えるんです。とにかく、今を大切にしています。
馬の鼻先に人参ぶら下げて、前に進むんだけど、その人参をいつまでも食べられないような育て方をするのか、今日食べちゃって、明日もまたおいしいもの食べようみたいな育て方をするのか……。私は、毎日毎日おいしい遊びをたくさんして、今日も楽しかった、明日も楽しかったら、この子は人生ずっと楽しいよ。そんな考え方をしていますね。
PROFILE
内田 幸一(うちだ こういち)
『森のようちえん』全国ネットワーク 運営委員長
飯綱高原ネイチャーセンター&冒険あそびの森(長野市) 代表
長野県野外保育連盟 理事長
野あそび保育みっけ(長野県飯田市) 園長
1953年 東京生まれ
東京写真専門学校報道写真科卒業
和光大学人文学部人間関係学科卒業
1977年 私立鴬谷さくら幼稚園に勤務する
1978年 野外教育クラブ設立。東京近郊の野山にて小学生対象の自然体験活動を展開
1980年 西ドイツのシュタイナー学校・幼稚園を視察
1983年 飯綱高原で子どもの森幼児教室開園。以後20年間、主宰代表を務めるかたわら、さまざまな幼児教育活動を展開
1994年 飯綱高原にネイチャーセンターを開設。幼児・児童の自然体験活動の推進および指導者育成を行う
2005年 学校法人いいづな学園設立。グリーン・ヒルズ小学校開校。こどもの森幼稚園開園
2016年9月 高知県で森のようちえん以後の私立小学校開校準備中
『森のようちえん』全国ネットワーク
2008年11月、日本における『森のようちえん』活動、自然体験活動の先駆者たちが、『森のようちえん』の普及と質の向上を目指して設立。
Facebookページの「いいね」を押していただければ、更新情報が確認できます。
OYAMANA LINE@でも更新情報が確認できます。