「遊びの中にある学びとは?」をさまざまな方にインタビュー
安部 義孝さんインタビュー
子どもの成長過程に必要なのは
自然を知ること、良い人と出会うこと
2016.12.9
アクアマリンふくしま館長
安部 義孝(あべ よしたか)
「幼児期の自然体験が、その子の人生を左右する」と語る安部義孝さん。1940年に生まれ、豊かな自然が残っていた時代に幼少期を過ごした安部さんには、今の子どもたちに足りないものがはっきり見えています。誰もが目を輝かせる水族館や動物園に50年以上も関わりながら、子どもたちに「何をするべきか」「何を知るべきか」「何を守るべきか」のメッセージを発信し続けています。アクアマリンふくしまで行われている多種多様なキッズ向けイベントには、成長過程で知ってほしい「深い教え」が込められています。
可愛い子には旅をさせよ
外に飛び出して、自分で体験してほしい
今の親御さんは『トムソーヤーの冒険』(マーク・トウェイン著)を読んだことがありますかね? 1876年に発行されたアメリカの古い小説なのですけど、子どもはもちろん、昔は子どもだった大人にも大人気だったんです。
トムソーヤーはミシシッピー川のほとりで暮らしている10歳のいたずらっ子なのですが、外で遊ぶのが大好きで、ハックルベリーというガキ大将と知り合います。トムは彼にくっついて洞窟を探検したり、川で魚をとったりして、アメリカの豊かな大自然の中をいろんな冒険していく物語です。
小さな子どもを持つ親御さんにアドバイスするなら、要するに、「チビちゃんには冒険をさせましょうよ」と思うのです。テレビやパソコンの中の仮想的な空間にばかりいないで、ぜひトムのように外に飛び出して、子どもが自分で体験してほしいですね。
僕の子どもの頃のような自然を取り戻すことはできませんが、「アクアマリンふくしま」はそれに近い環境を作り出すことはできますし、またそれをやっていくのが僕らの役割だと考えています。
子どもたち用のプログラムや体験型の施設がとにかくたくさんあります。楽しく遊びながら、水中の生き物の環境保全や命の大切さを学んでもらえればと思っています。いっぱい体験させてあげて、「時間に追われるよりは、子供たちが自由に発見したことを一緒に見てあげたい」と、親御さんにそう思ってもらえたら嬉しいですね。
自然の姿を見せてこそ、本当の“生”と“死”の理解につながる
とはいえ、みんながみんな同じように感じるわけではないので、親御さんからはいろいろな意見があります。大水槽などで、強い魚が弱い魚を食べる姿を見せているのですが、この間カワウソのところに魚を入れたら、「自然の姿を見せていて素晴らしい」という人もいれば、「そういう姿をみせるなんて、なんなの!」という批判もありました。
どちらかというとカワイイというイメージの生き物が、弱い物を追いかけて捕まえて食べるという、急に野生的な姿を見せるのが納得いかないようです(笑)。「アクアマリンふくしま」は自然の姿を見せるというのがコンセプトなので、そのへんはご理解いただきたいです。
子どもたちを相手に、カワイイというイメージだけじゃよくないですよ。子どもが成長過程で知らなければいけないことは、生と死を知ることだと思っています。親御さん世代は自然体験が少なくなっているせいか、そういうことがわからなくなっているのかもしれないですね。
PROFILE
安部 義孝(あべ よしたか)
(公財)ふくしま海洋科学館・アクアマリンふくしま館長
アクアマリンいなわしろカワセミ水族館館長
1940年、東京都生まれ
東京水産大学増殖学科魚類学教室卒業後、上野動物園水族館に勤務
1968〜69年、クウェート科学研究所所員
1969年、上野動物園水族館に復職
その後、多摩動物園昆虫園勤務を経て、葛西臨海水族園長、上野動物園長を歴任
2000年、アクアマリンふくしま館長
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