「遊びの中にある学びとは?」をさまざまな方にインタビュー
安部 義孝さんインタビュー
子どもの成長過程に必要なのは
自然を知ること、良い人と出会うこと
2016.12.9
アクアマリンふくしま館長
安部 義孝(あべ よしたか)
「幼児期の自然体験が、その子の人生を左右する」と語る安部義孝さん。1940年に生まれ、豊かな自然が残っていた時代に幼少期を過ごした安部さんには、今の子どもたちに足りないものがはっきり見えています。誰もが目を輝かせる水族館や動物園に50年以上も関わりながら、子どもたちに「何をするべきか」「何を知るべきか」「何を守るべきか」のメッセージを発信し続けています。アクアマリンふくしまで行われている多種多様なキッズ向けイベントには、成長過程で知ってほしい「深い教え」が込められています。
出会いと人生
いい人といい先生に恵まれることが大事
僕が豊かな自然の中で育った頃から考えると、もう2世代は自然から隔離されていますね。とくにお母さんは初めから自然に対する防御本能があるから、「危ないよ」と言ってあまり近づかせない。お父さんも同じで、釣竿の持ち方もわからない、針のつけ方もわからない。
街中にある川なんて、1世代30年として、2世代近くは、危険のないよう対策が施された川になっているのじゃないかな。虫も、刺す虫だのムカデだの危ないものはいろいろいるけど、刺されたりケガしたりしないと、本人はわからない。わかるためには、幼児期の体験が必要です。
それから、いい人や先生に恵まれることも大事。僕にとって先生と呼べる最初の人は、さっき言った冬虫夏草の研究者。今では全国的な有名人だけど、僕が大人になっても付き合いは続きました。僕が20代の頃、一緒に酒を飲んだりしたけど、その人は、当時は70代だったと思う。
人とのつながりが生む貴重な体験
水産大学の先生はミシガン大学から帰ってきた先生でした。その先生はアメリカの魚の分類の教室をやっていたのですが、英語で授業やるので、魚のことはもちろんだけど、英語まで覚えましたよ。
就職は、水産会社や国の研究所に行く人が多かったのですが、役所勤めはおもしろくなさそうで(笑)、水族館になんとか入れました。今はもう閉館した上野動物園水族館は、東大の裏の不忍の池に面していました。ちょうど東京オリンピックの年でした。
その後はクウェート大学の研究所に行く機会にも恵まれました。これも「人」のつながりのおかげで得られた経験です。アラビア湾(ペルシャ湾)の魚類調査でしたので、朝から晩まで魚ばっかり捕っていましたよ。2年ほどいて、バビロンの遺跡やエジプトとか、だいぶ歩き回って、本当に貴重な体験でした。
環境の劣化とともに「自然体験」が貴重な場となっていく
多摩動物公園の昆虫館の係長をやったこともありました。そこには、かつての昆虫少年が大人になったのがいっぱいいてね、虫も捕れないとバカにされる。専門は魚でしたけど、子どものときに虫は慣れていたから、最初から網持って虫を追いかけていましたよ。
多摩動物公園はおもしろかったな。よく動物が逃げるのでね、捕まえるのがタイヘン(笑)。当時の職員は、山形とかの農村地帯の次男坊や三男坊が多くて、みんな牛や馬を飼っていて農業高校を出ているから即戦力ですよ。動物慣れしているような職員が多かったな。
今は動物や畜産関連の大学や専門学校で勉強した子が多くなって、昔とはまったく違うね。みんな動物は好きみたいだけど、扱いに慣れていないせいか、動物に嫌われることもあるしね(笑)。結構人気の職種のようで、全国公募の応募者の数もすごいです。
環境が劣化してきているのと反比例して、猫や犬を含めた動物、昆虫、魚、植物などが好きな子が増えてきているのかもしれないですね。それだけに、水族館も動物園もいろんな自然体験する場所として貴重な場所になりつつあるのです。
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