「遊びの中にある学びとは？」をさまざまな方にインタビュー安部 義孝さんインタビュー
子どもの成長過程に必要なのは
自然を知ること、良い人と出会うこと
2016.12.9
アクアマリンふくしま館長
安部 義孝（あべ よしたか）
「幼児期の自然体験が、その子の人生を左右する」と語る安部義孝さん。1940年に生まれ、豊かな自然が残っていた時代に幼少期を過ごした安部さんには、今の子どもたちに足りないものがはっきり見えています。誰もが目を輝かせる水族館や動物園に50年以上も関わりながら、子どもたちに「何をするべきか」「何を知るべきか」「何を守るべきか」のメッセージを発信し続けています。アクアマリンふくしまで行われている多種多様なキッズ向けイベントには、成長過程で知ってほしい「深い教え」が込められています。
蛇の目ビーチ
「自然体験」と「命の教育」
パソコンにしがみついていちゃ、大切なことは学べない
「アクアマリンふくしま」では、子どもたちの「自然体験」として、五感を使って生き物を体験する仕掛けをたくさん用意しています。人工磯や川、釣り堀など、今ではなくなりつつある自然の世界を作って、小さい子どもたちに体で覚えてもらっています。
触ったり、捕まえたり、釣ったり、料理したり、食べたり、そういう五感に訴える体験は、併せて、知識欲も刺激されることにつながります。人間の形成はほぼ小学校の低学年くらいまでにでき上がってしまいますから、この頃の体験はとても大きいですよ。パソコンやテレビにしがみついていちゃ、大切なことを学べない。
安部 義孝さん
もちろん、当館には大水槽を含めた魚の展示や、手で触れることができるタッチプールも普通の水族館と同じようにあります。でもそれだけじゃなく、もう少し大きな自然を再現したいという思いから、「蛇の目ビーチ」という磯、干潟、浜辺からできた屋外体験施設を作りました。造波装置で波も出しています。
そこでは、親子で裸足になって潮干狩りや魚釣りも楽しめるし、その場で調理してもらって、食べることもできる。それとは別に、子どもたちが自分でさばくところから体験できるキッズプログラムも豊富です。カツオを1本渡してね。最初は「かわいそう」とか言っていても、お腹がすけば、それどころじゃない(笑)。
“誕生”と“死”を知る「命の教育」
それは、当館が力を入れている「命の教育」、つまり「捕まえて、調理して、食べる」です。誰もがそうやって生きている。捕まえて、食べるために殺しています。でも、捕まえる部分は普通の生活には無関係でやらないから、わかっていない。
自然界には、海に潜っても死体がないのですよ。全部それを食べちゃう動物がいっぱいいるわけです。陸上なら、例えばカニやカエルが道で潰されていても、カラスなどの生き物がみんな食べにくるからきれいになってしまうのですね。
館内には、わざわざ食用蛙の死体をおいて、それが土に戻るのを観察する展示があります。“死”を見せることも重要ですから。でも、子どもが「何だろう」って覗こうとしても、親が目をそらして、子どもの手を引っ張っていってしまうことも多い(笑)。
逆に、サメやエイの卵がかえるところを見てもらうというのもあります。それも含めて「命の教育」です。そう、自然界はそういうバランスで成り立っている。“誕生”と“死”のね。
「命の教育」と切っても切り離せない資源の保全
究極かもしれませんが、生き物と身近になるのは食べるためですし、生きてくためです。そのためには包丁を使わないといけないし、捕まえるための釣りの腕も磨かなくちゃいけない。それが大事です。ただ観察するだけじゃ、おもしろくもなんともないでしょ。そういうことを知ってもらいたいのです。
大水槽の前には寿司カウンターがあります。当館が取り組んでいる運動「ハッピーオーシャンズ」の一環で、資源量の少ない魚じゃなく、資源量が多い魚を中心に食べようというものです。美味しいお寿司を食べながら、資源に関する知識も知ってもらおうという消費者教育です。
テレビを観ていると、若い子たちが「寿司はやっぱり大トロ！」なんて言って、一番高いものばかりを食べたがる。将来親になる子たちが、それじゃ困るよ。もっと資源のことも知って、食べる工夫をしてもらいたい。ホンマグロ以外だって、おいしいマグロはたくさんありますよ。
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