「遊びの中にある学びとは?」をさまざまな方にインタビュー
大野 崇恵さんインタビュー
おいしいって、しあわせなこと
2016.6.26
家庭料理研究家
大野 崇恵(おおの たかえ)
ご自身の子育てを通して食育を実体験で学び、日々の食卓にムリせず楽しく取り入れている家庭料理研究家の大野崇恵さん。「妊娠中はいい卵? いい卵ってなんだろう」という疑問からスタートした食材へのこだわりは、今では調味料作りや野菜作りにまで及んでいます。大野さん手作りの幼児食は素材そのものの味が際立ち、懐かしくも新鮮な驚きを与えてくれる味です。
食育のきっかけ
情報を鵜呑みにする危険
私は高校生になる二人の息子を育てているのですが、食育に目覚めたきっかけは、上の子がお腹にいるときに聞いた卵の話。食に詳しい知り合いから「卵は良いものを食べたほうがいいよ。お腹の子に影響が出る可能性もあるから」と助言をいただいたこと。スーパーなどで売られている一般的な卵の飼料には輸入飼料が多く、遺伝子組み換えのトウモロコシなど使用されていることを初めて知ったのがきっかけでした。
食事は毎日のこと。そこで、せっかく食べるなら体にいいものを食べて出産にのぞみたいと考え、食材選びに気を使うように。当時、『有機野菜』という言葉を耳にするようになっていたので、まずは有機野菜、有機米から取り入れることにしました。
食べ始めた頃は、有機だから農薬を使ってないと勝手に思い込んでいました。でも、勉強していくうちに、必ずしも『有機=無農薬』でないことを知ることに。耳に入ってくる情報を鵜呑みにし、勝手な判断をしていた自分が怖くなりました。それがきっかけとなり「有機とは?」と、掘り下げて勉強するようになったのです。
日常のご飯が大好き
私の肩書は、あえてつければ家庭料理研究家でしょうか(笑)。美容食コーディネーターやフードコーディネーターとしての活動もしていますが、華やかな食卓を演出することより、私は『日々の暮らしの中にある日常のご飯』を一番に大切にしたいと考えています。『暮らしの中の営みでもある食事』を楽しみながら積み重ねていくことが自然と『食育』に繋がっていくと思うのです。
『食』に対し意識的に生活するようになり、せっかくならお味噌も作ろうと手作り味噌を始め気づくと10年以上に。今年はお醤油作りにも挑戦中で、自然栽培の麦や大豆などの畑のお手伝いに通わせていただきながら、生産者さんの元で有志の方々と1年を通しで学んでいます。『食育』を考える上で、この生産者の方々のもとに通うことはとても大切なことだと考えています。
実際に畑や田んぼに通うことで見えてくること
『食育』は本当に奥が深いもの。有機野菜を調べ始めたときも、「有機栽培と自然栽培の違いは?」という疑問が。多方面の方々に「どれが良いの?」とうかがうのですが、主観が違うと、答えの導き出し方が異なるので理解しきれなくなってしまったのです。そこで「これは畑や田んぼに行かないと!」「机上の勉強だけでは納得できないぞ!」と。実際に直接生産者さんの元へ通うことに。そこで、生産者さんの想いを知ることの大切さに気付いたのです。
数年前からご縁をいただき、慣行栽培、有機栽培、自然栽培の生産者さんの畑や田んぼに通い、実際にお手伝いしながら勉強させていただくことを始めました。今年はNPO団体の無農薬の畑をお借りし、会員の方々と会費を出し合いシェア畑に参加させていただくことに。お手伝いをさせていただきながら、さまざまなことを新たに学ぶきっかけをいただきました。野菜を作ることはもちろん、自然農法の農家さんをお招きし、勉強会が開催されたり、年末には餅つき大会などさまざまな経験が出来るのでそれも楽しみのひとつに。
お母さま方を対象に食育講座の講師もしているのですが、そこでは、自分で実際に見て学んだことを、メリット・デメリットを含めお伝えするようにしています。「慣行栽培、有機栽培の違いとは?」「自然栽培の野菜は体によいのになぜ普及しずらいのか?」生産者さんの立場による考え方の違い、想いを知ることで、すべてを良い悪いで判断するのでなく、正しい情報を身につけ必要に応じ、自らその時々に合わせ必要なものを判断し、選び取ることがいちばん大切なことだと気付いたからです。
『食育』は生きてく力を養うこと
自然に左右されるお野菜を消費者の方々のもとに一定量安定的に流通させようとすると、どうしても慣行栽培(化学肥料と農薬を使う一般の栽培方法)がメインになります。自然栽培は天候などに左右され、大きさや形も一定ではないので、消費者の方々の中には敬遠される方がおられるのも事実です。価格の問題も確かにあります。ただし農薬や化学肥料に使われる化学物質は、子どものアレルギーや内臓疾患の原因になっている可能性があることも否めません。
『食育』は、たんに体に良い食材や栄養バランスのことに気づかうことだけでなく、『生きてく力』を養っていくこと。だから奥が深い。私たちの食卓に欠かせないお味噌やお醤油などの調味料にもよく見ると、さまざまな添加物が含まれていることがあります。
野菜と同じように、大量に生産し供給を安定させるために、速く発酵させたり、逆に発酵を止めたりします。本来は長期熟成することで、大豆のたんぱく質が分解されて旨味成分が形成され、ビタンミンや酵素を含んだ発酵食品となり、アレルギーなども起こしにくくなるはずなのですが、スーパーでなに気なく購入する発酵調味料(味噌、醤油、酢など)の中には発酵食品としての力が備わらず、添加物により味だけを調整しているものも存在します。
お塩ひとつとってみても、『精製塩』と『自然塩』ではミネラルなどの含有量も異なります。毎日使う調味料だからこそ、先ずはそこから知る努力をすることが大切に思えるのです。『知らない』ということは『落とし穴』という危険があること。疑問を持ち知識を得ることで、購入する際に、「こちらは添加物が入ってないから、これを選ぼう!」「少しだけ高いけど、体を作る大切な食材だからこちらにしよう!」と、自ら判断することが可能になります。なるべくなら体に入れたくない成分は、避けて通ったほうがいいですよね。結果的に、お医者さまのお世話になることもなく、健康な体を手にすることに繋がるのですから。
Facebookページの「いいね」を押していただければ、更新情報が確認できます。
OYAMANA LINE@でも更新情報が確認できます。