「遊びの中にある学びとは?」をさまざまな方にインタビュー
大野 崇恵さんインタビュー
おいしいって、しあわせなこと
2016.6.26
家庭料理研究家
大野 崇恵(おおの たかえ)
ご自身の子育てを通して食育を実体験で学び、日々の食卓にムリせず楽しく取り入れている家庭料理研究家の大野崇恵さん。「妊娠中はいい卵? いい卵ってなんだろう」という疑問からスタートした食材へのこだわりは、今では調味料作りや野菜作りにまで及んでいます。大野さん手作りの幼児食は素材そのものの味が際立ち、懐かしくも新鮮な驚きを与えてくれる味です。
主役は子ども
主役がお母さんになっている方が多いように感じる
体に良いものをバランスよく食べるようにしたら、それで完了ではないのが『食育』。健康な体と心を形成するには、昼間は太陽のもとで体をいっぱい動かさないと、骨や体が丈夫にならないのです。子どもはとくに遊びの中で体を動かすことが重要。遊びを通し経験を重ね、体力、知識を身に付けていくのです。そのためには『食・運動・睡眠』このバランスがとても大切になります。
食育講座でお母さま方とお話する機会があるのですが、皆さんさまざまな悩みを抱えておられます。食について素材や献立のことも多いですが、「一生懸命に作っているのに食べてくれない」とか「がんばって工夫しているのに食べてくれない」等々。
食べないと、親御さんとしては不安ですしストレスに感じられることも。私も二つ違いで息子たちを育ててきたので、そこはとても理解できます。ただ、よくよく話を聞いてみると、お母さま方は情報に惑わされ、「こうしないといけない」「ああしないといけない」と、主役がお母さま方(親御さん)になってしまっているのではないかと感じることが多いのです。主役はあくまでもお子さん。お子さんの持つ個性を観察しながらよく見極め、無理強いをせず見守ることが大切。親御さんの不安はダイレクトにお子さんに伝わるもの。「食べさせなければ!」と力んでいるお母さんの顔は、お子さんの立場からみると、「ママ怖い」と感じ、委縮してしまう原因に。できるだけ『食べる=楽しい』を経験させ、『おいしい=しあわせ』を体感させることがポイントになります。
食べてくれないのは、お腹が空いていないサイン
お母さま方が「食べさせなくちゃ!」と力まなくても、お子さんはお腹が空けば食べるもの。食べてくれないのは、お腹が空いていないサイン。もうひとつ考えられるのは、運動不足。体を動かしてないのです。「あれもしちゃダメ、これもしちゃダメ、あぶないからダメ」と言い過ぎて、思い切り体を使う遊びをさせていないことってありませんか? 公園に行くとケンカをしたり、ケガをしたり心配だからと家で遊ばせ過ごしている方も。これではお腹が空きません。大人も動かなければあまりお腹も空かないですよね。お子さんも一緒です。
我が家は子どもが幼稚園にあがるまで、午前と午後に公園などで遊ばせていました。10時になると公園行って、12時までに帰ってきてお昼を食べさせたらお昼寝。お昼寝から起きると3時から5時位(冬の間は4時位)まで公園で遊ぶ。お兄ちゃんの手を引きながら下の子は背中におぶって、天気のいい日はほとんど毎日が外遊び。確かに公園ではお友達同士のケンカなどもありましたし、そのたび悩んだこともありましたが、それらの経験が子どもたちの心の成長にはとても大切なことだったと今では思うのです。
そんな風に子ども主体で生活していると、子どもたちは夕方にはもうお腹がペコペコ。だから夕ご飯はたくさん食べるし、お風呂に入れると、次の日の朝まではガーッと熟睡(笑)。早く寝てくれれば、自分はゆっくりお風呂に入れるし、本も読めるし、テレビを観る時間も。昼間、子どもをたくさん外で遊ばせることで、結果的には夜は自分の時間に。
子どものリズムに合わせながら
昼食も夕食も、公園から帰宅してご飯を作ると、時間に押されイライラする原因になってしまうので、当時は朝のうちに準備し30分もあれば調理できる段階まで仕込んで、タッパに入れ、冷蔵庫にストックすることを習慣にしていました。そうして、いざ公園に! 「それってタイヘンじゃない?」と友人には言われましたが、イライラし八つ当たりをして落ち込むことを考えれば、朝の1時間早起きしたほうがよほど気はラクと思っていました。
公園に連れていきさえすれば、子どもは遊びまわって機嫌がいい。お腹も空き、帰宅するとご飯をいっぱい食べてくれる上に、早い時間にグッスリ寝てくれる。このリズムがラクだなと。ただし、これは我が家の息子たちだから通じた可能性もあります。お子さんのもつ性格や特徴をよく見極めることが大切です。
子育て中、親は知らぬ間に自分が都合のいいように誘導してしまいがち。それをやめて、徹底的に子どもに合わせてみることに。暗くなれば眠るし、お腹が空けば食べるし、遊びたくなれば思い切り遊ばせる。疲れているようならはゆっくりと休ませる。これに付き合ってみると生活のリズムがつかめるように。ただし親の勝手な都合で、幼いころから夜が遅い生活をしていると、体内時計が乱れてしまっていることも。その場合は基本的な生活習慣から見直すことも必要となります。
子どもは大人が考えるほど難しいことを求めてない
親の言うことをしっかりと理解できるようになるには、時間がかかります。しつけなどは生活の中で繰り返し伝えていくことで、経験として子どもたちは学んでいきます。理解できるようになるまで、根気よく伝えていくことが大切。
子どもは、大人が考えるほど難しいことを求めていないもの。大人は、大人の考えで遊ばせようとするから、「あーしなくちゃいけない、こうしなくちゃいけない」と形ばかり気にしてめんどうくさくなってしまうことも。でも、子どもたちはいたって単純。
泥だんごがうまくできれば楽しいし、水遊びで水が冷たければ気持ちいい。頭の上から泥をかぶってみたければかぶるし、乾いて髪の毛がカピカピになれば、それがまた楽しくて笑ってる。そのあと、ふと我に返ったように親の怒った顔が浮かぶのか、「こんな頭じゃ、怒られる」と困った顔。観察していると、おもしろいくらいに表情が豊か。
何もなくても子どもたちは自ら遊びを考え、体を使い五感を通して経験し学んでいくのだと、子育てを通して彼らから教えてもらったように思います。
Facebookページの「いいね」を押していただければ、更新情報が確認できます。
OYAMANA LINE@でも更新情報が確認できます。